映画『ヒトラーに屈しなかった国王』ネタバレ感想。ノルウェーの歴史を知るほどおもしろい!

ABOUTこの記事をかいた人

南デンマークと冒険を愛する北欧ツアーコーディネーター。日常のささいなことを綴っています。

    実話を元にしたノルウェー映画『ヒトラーに屈しなかった国王』を観ました。第二次大戦時、中立国だと宣言したにも関わらずナチスドイツに侵略されるノルウェーの王室の様子が丁寧に描かれた映画です。

    ノルウェーの戦争被害者としての一方的な視点ではなく、ノルウェー駐在ドイツ公使の心情や苦悩も描かれているところが面白い!

    物語のあらすじ

    舞台は1940年のノルウェー。ドイツ軍の主要都市への侵攻をうけて、物語の主人公であるノルウェー国王ホーコン7世は、家族や閣僚たちとともに田舎に逃れます。

    ノルウェー軍は必死に抵抗しますが、ドイツとの戦力差は一目瞭然でした。

    一方、ノルウェーに住んでいるドイツ公使のブロイアーは本格的に戦争が始まることを望んでおらず、穏便な解決を求めています。

    ヒトラーから「直接国王と謁見しろ」との命を受けた彼は、降伏の文書に国王からの署名をもらって戦いを早期に終わらせるために、ホーコン7世の居場所を探りはじめました。

    この映画は、2人の視点での逃亡劇と、ナチスドイツに降伏をせまられた国王の選択に焦点をあてた作品です。まぁタイトルの時点でネタバレしてますが、そういうことです。

    主人公のホーコン7世について

    ホーコン7世は、もともとはデンマーク王家のカール王子です。ノルウェーが独立して立憲君主制の国になるときにデンマークから国王に即位し、名前もカールからノルウェー語のホーコンに改名しました。

    なので、映画では周りがみんなノルウェー語を話すなかホーコン7世(カール王子)だけは物語の中でずっとデンマーク語を話しています。ノルウェー人と普通に会話が通じるのは、兄弟言語ならではですね。

    映画がもっと面白くなる歴史的背景

    ノルウェーの王家は、通常政治に関与できません。ドイツに制圧される自国を見て抵抗することもできず、ホーコン国王の息子であるオーラフ王子は「嫌われていて意見も言えないなら、王室になんの意味があるんだ?」といったことを作中で発言しています。

    王室が存在する理由…… 日本にも皇室があるため、思わず考えさせられますね。

    ここからは、ノルウェーの歴史を少し解説していきましょう。

    カール王子がノルウェー国王に

    デンマーク出身のカール王子(のちのホーコン国王)は、ノルウェー国民に選挙によって選ばれた最初の国王です。

    彼が国王候補になった理由として、こんなことがWikipediaに書いてありました。

    1. すでに息子がおり後継ぎが安定して得られる状況だった
    2. 英国の王女と結婚しており、英国からノルウェーへの支援を期待された

    しかしカール王子は、ノルウェーの政治家や権力者の多くが王家よりも軍事政権を支持してることを知っていました。

    だから国王になってくれと頼まれたときは「自分を王に選ぶかは、ノルウェー国民の投票で決めてもらう」という条件を出し、結果的に投票数が過半数を上回ったのです。

    国王になる人物をわざわざ国外から呼んで、そのうえ投票で選ぶなんて色んな意味で日本なら考えられないですよね。

    そんな国王ですから、なによりノルウェーと国民のことを第一に考えています。

    作中で若い兵士が国王に忠誠を誓って「すべては国王のために(Alt for Konge)」と言ったところを「いや、すべては国のために(Alt for Norge)だ。」と修正するほど。

    「すべては国のために」はホーコン国王の生涯のモットーでした。

    国の明暗をわける密談。王の決定とは ※ネタバレ

    話は映画に戻ります。国王と無事に謁見の間をもうけることができたドイツのブロイアー公使は、独自の判断でノルウェーに譲歩し、どうか降伏してくれと説得を試みます。

    ここでノルウェーが抵抗すれば、一般人も含めたより多くの命が失われることになる。ホーコン7世の実兄、国王クリスチャンが治めるデンマークもすでに降伏したと。

    そのときのホーコン国王の返しは「この国の行く末はこのような密談で決まるのではない。国民投票による総意で決まるんだ。」

    細かいセリフは曖昧ですが、おおっとなりました。ここまで民主主義を貫くか!

    国王の答えはすなわち「ノー」。

    ブロイアー公使にお前はヒトラーと同じだ!と激高してボロクソに追い返します。自分なりに考えて妥協点を探ろうとした公使にとっては踏んだり蹴ったりですね……。

    ノルウェー語の映画の原題は「Kongens nei」直訳すると国王のノーです。ノルウェーの政治がまともに機能していない状態で、国王が直接判断を下しました。

    彼の決定はどのような結果をもたらしたか

    ドイツへの降伏を拒否したことで、当然ドイツは空襲などでノルウェーを攻撃します。圧倒的な力の差によって、ノルウェーは結局ドイツに占領されてしまいました(ここらへんは映画のテロップで説明されてたかも)

    国王は英国に亡命し、外からラジオなどを通してナチスへの抵抗を続けたそうです。

    王室が内政に介入することがタブーとされるノルウェーで、国王が直接ノーという。この行動は、却ってノルウェーの民主主義を守ったとして評価されました。

    ホーコン7世は国家統一と抵抗の象徴となり、彼のモットーである「すべては国のために(Alt for Norge)」は息子のオーラフ国王、そして現在のノルウェー国王であるハーラル5世にも受け継がれています。

    でも、正しい判断だったの?

    個人的な意見ですが、結果的に多くの命が失われてまで意思を貫くという彼の判断を、絶賛したいとは思いません。

    難しい判断でしょうね。結局、ブロイアー公使の言う通りドイツから更なる攻撃を受けてしまいましたから。国が一番大切といいますが、国を作るのは国民です。その命が危険に晒されていいのか?と疑問を覚えました。

    ホーコン7世は民主主義を貫いた人として評価され、たくさんの人に愛された国王です。しかし、たぶん普段から国民とフラットな関係を築いている彼でなければこうはならなかったでしょうね。

    作中でも、侵攻から逃げるために一般の国民と一緒の電車に乗り込んだり会話をしていたりして、王族なのに親しみやすさを感じましたからね!(笑)

    北欧の王家ってなんでこうカジュアルなんでしょう?そこが好きなんですけどね。

    歴史や言語を知っているほど映画は楽しめる

    この映画についての小ネタは、実話を元にしているだけあって調べれば調べるほど出てきます。

    たとえば、ホーコン7世の兄でありデンマーク国王であるクリスチャン10世は、第二次世界大戦時に2時間でドイツに降伏しています。しかし同じゲルマン民族と見なされてまぁまぁ悪くない扱いを受けていたデンマークの国内から、さまざまな抵抗を試みました。

    ヒトラーから誕生日に送られた長い電報に対して「ありがとう。クリスチャンより」とだけ返信してヒトラーに激怒された逸話とか。国外から抵抗を呼びかけたホーコン7世とは対照的ですが、兄弟揃ってやりますね!

    あと、作中では国民や王家はノルウェー語、ドイツ公使のブロイアー氏やナチスの人々(ヒトラー含む)はドイツ語、デンマークから来たホーコン2世はデンマーク語を話しています。

    北欧のなかで、デンマーク語の発音はとってもわかりづらいとよくネタにされるので、書き言葉はともかく話し言葉で通じるのかな?とずっと映画を観ながら思っていました(笑)

    そうした言語の切り替わりや、上で説明したような歴史的背景を調べたりすることがノンフィクション映画を楽しむポイントなのではないでしょうか。

    『ヒトラーに屈しなかった国王』、とってもおもしろい映画でした!

    【公式サイト】ノルウェーに屈しなかった国王

    スポンサーリンク