ドイツでの不思議な体験。知らないおばあちゃんと何度も遊んだ話

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ローカルな旅と南デンマークを愛する北欧ツアーコーディネーター。毎日をちょっと特別に。

ある冬の寒い日、ドイツ第二の都市ハンブルクにて。ワーキングホリデーでハンブルクに来た私は、初日から路頭に迷っていた。

日本から持って来てしまった現金を両替したいが、どこで両替できるのだろうか。語学学校がはじまる前日に到着し、インターネットも完備されていなかったため、街のどこに何があるか知らなかった。

普通に考えたら銀行に行けば解決しそうだが、その場所が見当たらない。ネットで探すこともできない。困りながら地図がのっている掲示板を見ていたら、70歳くらいの女性が声をかけてきた。

「何か困ってる?
(Kann ich ihnen helfen?)」

これが、彼女との出会いである。

suzan

金髪で大柄な彼女はスーザンと名乗り、一番近い銀行で両替ができると教えてくれた。

行く方向が同じだということで一緒に銀行に向かう途中、そして銀行の列で待っている途中、スーザンはいろいろな話をしてくれた。

彼女が若い頃にイランからドイツに来た移民だということ、定年退職してから時間があるから毎日ハンブルクを散歩していること、そしてある日本人を探しているということ。

どうやら、以前交流があったイチノセ シュウイチという名前の男性にもう一度会いたいと思っているとのことだった。

その日はあいにく予定があったので、両替をしたらすぐに家に帰らなくてはならなかったが、そんな話をしてくれたスーザンには不思議と親しみを覚え、また会いたいと思った。

連絡先をたずねると「携帯やパソコンは持ってないのよ。だから電話番号もメールもないわ。」という。そっか残念… と肩を落とす私に、彼女は提案してきた。

「また明日、13時半にこの場所で会えばいいじゃない?」と。

考えてもいなかった。というより、そんなアナログな待ち合わせ方法は小学生以来していなかったので、忘れていたのだろう。まるでドラマみたいだなと思いつつ、次の日に同じ場所で会うことに。

スーザンはちゃんとそこにいた。

その日はハンブルクのさまざまな場所を一緒に周った。大きなショッピングモールであるヨーロッパパッサージュ、倉庫街、ハーフェンシティ、エルプフィルハーモニー……

ハンブルクに住むなら知っておいたほうがいい場所を、ひとつひとつ丁寧に歴史まで教えてくれた。

speicherstadt

ハンブルク倉庫街

一緒にお茶をしながら、イチノセ シュウイチという人について聞いてみた。

もう10年前以上にハンブルクに住んでいた日本人の学生で、帰国後も文通を続けていたらしい。しかし、スーザンの引っ越しのタイミングで住所を書いた紙を無くしてしまい、連絡が取れなくなっていると。

だから街で日本人を見かけたら、知っているか聞いているんだという。どうにかして探し出したくてFacebookで検索してみたが、それらしい人は見つけることはできなかった。

その後も、スーザンとは3,4回ほど待ち合わせして一緒に遊びにいった。毎回、時間と場所を決めて待ち合わせだ。そこにデジタルのコミュニケーションは一切ない。

連絡ができないから、お互いに相手を信じて待っているしかないのだ。

スーザンはハンブルクのことはなんでも教えてくれるし、カフェ代も絶対に受け取らない。なぜ見ず知らずの私によくしてくれるのと聞くと、最初に会った時から親近感があるからと言ってくれた。

語学学校が終わり、私は南ドイツで2週間のボランティアがあるためハンブルクを一度離れることになってしまった。

スーザンとの連絡手段がなかったので、ボランティア後のハンブルクでの勤務先の住所を教えておいたが、その後彼女と会うことはなかった。

どこかのタイミングで偶然再会しないかなと少し期待しながら何度も街を歩いてみたりもしてみたが、まぁ会えるわけもなく。

仕方がないけれど、こんなに寂しいものなのか。連絡手段がなかったから、余計に彼女と1回1回会えることをすごく大切にしていたんだと気づいた。

ハンブルクの街中で偶然出会い、お互いのことはほとんど知らないのに意気投合して、毎回待ち合わせて出かけていく。

彼女との出会いを通して、なんだか携帯がなかった時代の懐かしさや、不便な良さを思い出させてもらった気分だ。

作り話のような、本当の話でした。

あとがき

今年のハンブルクで語学学校に通っていたときの1か月間ほどの出会いについて書いてみました。

私はスーザンの住所も家族も、何をしているかも全然知りません。逆に彼女も私のことを知りません。けれどこんな出会いもあるんだなぁ、と思っていただければ。

スーザンに会えたことは、いまだにワーホリ中の不思議な思い出として私の中に残っています。彼女については手元に残るものも、メッセージのやりとりなどデータとして残るものもありません。

親切に対してお返しできたんじゃないか、と考えることもありました。正直後悔が多いです。

これからも彼女のことは忘れたくないので、ここに残しておきます。

長々と読んでくれてありがとう!

ではまた~